「社会保障」と「社会保険」の違い|知っておきたい社会保障
なんとなくイメージできるけど、説明となるとできない、そんな「社会保障」と「社会保険」について。
今回の記事を読んでいただければ、今後誰かに「社会保障と社会保険って何が違うの?」と聞かれたときに説明していただけると思います。
社会保障と社会保険の違い
社会保障というのは総称です。
「社会保障」や「社会福祉」という言葉は第二次大戦後に普及した言葉です。
それ以前は「社会保障」や「社会福祉」という概念が定着していなかったんですね。
欧米のソーシャルセキュリティ(social security)、ソーシャルウェルフェア(social welfare)という言葉から、「社会的に幸福を追求しましょう」という意味を持って生まれた造語なんです。
つまり、タイムマシンで江戸時代や平安時代に行って「社会保障」「社会福祉」などと言っても、「???」となると思います。
戦後発布された日本国憲法に、「国は、社会保障、社会福祉、及び公衆衛生に努めなければならない」と明文化され、はじめて広く国民に知れ渡りました。比較的に新しい言葉と言えますね。
では、国はすべての国民をどのようにサポートしていくのか。
「社会保険」「公的扶助」「社会福祉」「公衆衛生」、この4つの柱を軸に日本の社会保障は成り立っています。
社会保険
「社会保険」というのは◯○保険という名称の公的なもの、例えば「医療保険」「年金保険」「雇用保険」「労災保険」もそれに当たります。
こういった毎月国民から徴収(賦課とも言います)した財源で国民をサポートするものが社会保険です。
公的扶助
「公的扶助」というのは一定の条件に当てはまる人を対象に、日本国憲法25条の生存権を維持しましょう、というものです。
代表的なものとして「生活保護」「社会手当」がそれに当たります。
一定の掛け金を納めていなくても条件に当てはまればサポートされるという点が社会保険と異なりますね。
社会福祉
「社会福祉」というのは高齢者や障害者、児童や母子父子寡婦など、社会的に弱い立場にある人たちに対する様々な助成や補助のことを言います。
一つひとつ○○福祉法といった法律に則って補助制度が整備されています。
公衆衛生
「公衆衛生」というのは、公共、民間問わず、多数の人が出入りする場所や下水道など、国民の健康衛生を保つために努めることを意味していて、主に保健所が中心となって指揮しています。「健康被害」「感染症対策」などもこれに含まれます。
余談
ここまで読んでいただければ、「社会保障」と「社会保険」の違いについてイメージしていただけたかと思います。
ここで余談なのですが、社会保障の中の、社会保険の中の、医療保険。
日本は1961年から国民皆保険がスタートし、すべての国民が医療保険に加入することが義務付けられました。
生活保護受給者以外の人は職場の保険証や国保と呼ばれる国民健康保険証を持っていることが普通になっていますよね。
これは世界的な標準ではないってご存知でしたか?
例えばアメリカではオバマさんが“オバマケア”と称された国民保険を目指しましたが実現できませんでした(トランプさんが全部ひっくり返しちゃいました)。
自分の身は自分で守るというお国柄ですね。
また、日本の医療保険には「高額療養費」という月の上限額が設定される制度があります。
この上限額(所得により限度額は異なる)を越えた分は個人に請求しない、つまり、病院やクリニックの会計で限度額までの支払いで済むという仕組みも日本の医療保険の特徴です(以前は「償還払い」と言って後から還付される手続きが一般的でした)。
オランダや北欧諸国は医療費、学費などが免除(国が負担)されます。
政治をチェックする第三者組織(オンブズマン制度)などにより、透明性ある税金の使われ方がされれば、国民が暮らしやすく、少子化問題の解消にも繋がる気がするのですが、そう簡単な問題ではないようですね。
時間の経過とともに複雑化した構造になってしまい、いずれの補助も申請しないことにはサポートしてもらえない一貫した「申請主義」であることも日本の社会保障制度の特徴です。
戦後つくられた日本国憲法と深い繋がりのある日本の社会保障制度。
仕組みから見直すタイミングに来ているのかもしれません。
まとめ
簡潔ですが、「社会保障」と「社会保険」の違いについて説明させていただきました。
よく聞くけど、違いがよくわからなかったという人の参考になれば幸いです。
- すベての国民が「健康で文化的な最低限度の生活」を営めるよう、社会的にサポートしようと目指す仕組みが「社会保障」
- それを実行するに当たり、4つの柱のひとつを担うのが「社会保険」