社会保障

【解決】「傷病手当」と「労災」の違い|知っておきたい社会保障

「傷病手当」と「労災」の違い

日本の社会保障の特徴に「申請主義」であることは前回の〔知っておきたい社会保障〕でお伝えしました。今回は「傷病手当」と「労災」について。

「傷病手当」は働けなくなった人がもらえる給付で、「労災」は勤務中に怪我や病気になった場合に受けられる補償なんじゃないの?とイメージされる人が多いのではないでしょうか。

では、「傷病手当」と「労災」の違いはそれだけでしょうか。勤務中か、勤務中でないか、それ以外にはどういった違いがあるのかを説明したいと思います。

傷病手当

傷病手当とは、病気や怪我などの理由で勤務できない状態になり、連続して4日以上勤務できなくなった人が申請することで、給与の2/3が補償されます。

厳密には複雑な計算式ですが、「支給開始日前の過去12ヶ月の各月の標準報酬月額を平均した額」÷30日×2/3が支給日額になります。

期間

受給期間は最長で1年6ヶ月間給付を受け取れます。

1日でも出勤すれば「就労可能」と判断され支給が停止してしまう可能性があるので注意しましょう。

申請先

申請先は加入している健康保険の保険者です。職場の事務担当や総務の人に相談してみましょう。申請書や病院で証明が必要な書類を受け取り手続きをします。

雇用保険に加入している人が対象となる制度となるため、自営業やフリーランスで国民健康保険に加入している人は傷病手当がありません。働けなくなった場合に備えて民間の保険に加入しておきましょう。

医療費

医療機関に健康保険証を提示して、自己負担分を支払いましょう。

労災

一方で労災とは、労働者災害補償保険の略称で、通勤・勤務中に発生した怪我や病気によって療養が必要となった人(国籍、居住地、雇用形態に関わらず)に支給される給付金です。

休業補償内容は、勤務できずに賃金が発生しない日の4日目から支給されるもので、その額は1日について基礎日額の60%に相当する額とされています(労基法第76条)。

労災はさらに休業特別支給金があり、基礎日額の20%に相当する額が上乗せされます。これは保険給付(休業補償給付60%)とは別に支給されるものです。

つまり、休業特別支給金20%が支給されることにより、休業に対する補償は給付基礎日額は実質80%となっています。

期間

労災が支給される期間は、休業補償の支給要件に該当しなくなるまでです。

申請先

全国にあるハローワーク労働基準監督署に相談します。

傷病手当と違い、雇用保険に加入している必要はありません。

アルバイトであっても労災を支給するかは雇用先ではなく労働基準監督署が判断します。間違わないように注意しましょう。

医療費

休業中に医療機関に罹る場合、医療費は健康保険ではなく労災保険(職場)が負担します。

ただし、労災指定医療機関かどうかで手続きが変わってきますので、あらかじめ罹る医療機関が労災指定医療機関か確認しましょう。

労災の保険料は事業主が負担します。雇用保険のように従業員が保険料を負担する必要はありません。
労災が頻発している職場は保険料が高く労災認定される従業員の少ない職場の保険料は低く設定されるというインセンティブが設けられています。その差は40%も増減します。
これは日本全国の雇用環境が安全で働きやすく改善されるべきという考えのもと施された政策です。

傷病手当の特徴

  • 傷病手当は休職前の日額2/3(66.6%)が支給される
  • 雇用保険加入者が対象
  • 傷病手当は比較的審査が早い(目安として申請から支給まで2~3週間程度)
  • 受給期間は最長で1年6ヶ月間支給される

労災の特徴

  • 労災に認定されると休職前の日額80%が支給される
  • 傷病手当よりも手厚く医療費の自己負担なし
  • 労災認定するかは労働基準監督署の判断(雇用主ではない)
  • 勤務中の傷病者が対象(国籍、居住地、雇用形態を問わない
  • 労災は認定までの審査に時間がかかる(傷病の内容によるが数ヶ月~1年以上のケースもあり)
  • まずは比較的審査の早い傷病手当と同時申請し、当面の生活費に充て、労災認定され次第切り替えることも考慮する
  • 受給期間は労基の支給要件に該当しなくなるまで

まとめ

ざっくりでしたが以上が「傷病手当」と「労災」の違いについての説明でした。

聞いたことはあるけど詳しくはわからない、そんな人に役立つ内容であれば幸いです。

傷病手当は健康保険、労災は労働保険、どちらもまったく別の制度で運用している財源もことなるため、迷ったらどちらも申請して生活を守りましょう。

前回の記事でも書いたように日本は申請主義なので、「せっかく権利があるのに(あったのに)申請しなかったから助成が受けられなかった!」ということのないよう、気になることがあれば調べて、すみやかに手続きしましょうね。

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GREEN TEA
グリーンティー→ソーシャルワーカー。新しいテクノロジー好き。時々スピリチュアル。ハーブティー→看護師。トレンドに敏感だけど実はそんなに興味なし。仲良し夫婦のお気楽ブログ。